人気ブログランキング | 話題のタグを見る

映画「ダウト」(疑念)

 先日、米国映画、「ダウト」を友人と一緒に見て来ました。前から、ぜひ見たいと思っていた作品です。その理由は、テーマが厳しいミッションスクール(カトリック校)であること、どうやら神父とシスターの葛藤がテーマらしいと言うことでした。
 実は、私自身も幼稚園から高校までミッションスクール育ちなので、郷愁と好奇心の両方が確かにありました。友人もかつてのクラスメート、互いに似た思いでこの映画を鑑賞したようでした。主演のメリル・ストリーブがお気に入りのスターと言うこともあります。

 メリル演じる校長(シスター)は超厳しくて、生徒がちょっとでも生意気だったり、授業中やミサ中に私語をかわしたり、行儀が悪かったりすればビシバシと叩き、叱り飛ばします。彼等から恐れられ、煙たがられ、嫌われている存在です。しかし「嫌われるのが私の役目で仕事」と言い切っているところがむしろ見事で、痛快です。若者に媚びる大人が多い昨今特にそう感じるのです。

 さてメリル校長の頑固一徹の「厳しさ」は生徒のみならず、若い先生や上司である神父に対しても加減しません。あるとき、神父が若い男子生徒を誘惑したらしいと彼女は疑い(ダウト)を持ち、徹底的に追求を始めます。絶対の証拠はないのですが、神父が時には情に訴え、時には権威を傘に脅すのに対して、彼女はひるむ事なく、凄腕の検事のように追いつめとうとう落とします。

 カトリック信徒にとって神父は「神の代理人」と言われ大変な権威です。そんな相手と闘うのはハイリスクです。しかしメリル校長は学校の名誉と生徒の安全のためには権威にも屈しない、まさにカッコいいし、胸がスーとします。

 しかし、「ダウト」は単なる武勇伝ではないのです。メリル校長は教え子に手を出したゲイの神父を追放し、同性愛の問題と対決したのですが、心のどこかで「果たして同性愛は罪なのだろうか」と自問自答(ダウト)したと思われます。当時(1960年代)米国ではゲイに対する偏見が強かったとはいえです。

 また、立場ゆえに厳格さを貫き、やさしさの片鱗も示すことができない、そんな自分の立場をつらいとか、それで良いのかと疑うことも校長にはあったと想像しました。一方、いかにも物わかりが良くて思いやりがありそうに振る舞い、語り、人気のあった神父が実は偽善者だったのか?

 「さあ、貴方ならどっちに共感する?」と問われているような、聴衆がダウトをおみやげにするような映画でもありました。私はメリル・ストリーブに一票を投じたいと思ってます。



 


 
by yoshikos11 | 2009-03-14 03:21
<< ゲイに対する偏見:北米の事情 お箸が持てるようになった! >>