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世界初の子どものホスピス

 昨晩は英国の子どものホスピス、ヘレン& ダグラス・ハウスの創始者、シスター・フランシス・ドミニカを初め、ハウスの関係者数名を招いてのシンポジュームが聖路加看護大学の講堂でありました。
 シスターが子どものホスピスを創設した経緯を話されましたが、それが、高邁な思想や理想などから生まれたのではなく、実に身近な親切からスタートしたと言う点が興味深かったです。困っている隣人に手を差し伸べたいと心ある人なら誰しも感じるような気持、たいへん現実的で実践的なシスターの気持が「世界初の子どものホスピス」実現という偉業に繋がったのです。

 ある時、重病の子どもを抱えて、看病で心身ともに疲労困憊している母親が、シスターに苦境を打明けたそうです。その子(ヘレンちゃん)は昼も夜も片時も目が離せず、親は一日24時間、彼女のケアで睡眠はおろかつかの間の休息すら思うに任せません。
 母親は「こんな状態がいつまでも続くのかと思うと不安でたまらない」と訴えたそうです。同情したシスターは「何とかしなければ」と思い、「私が2-3日、ヘレンを預かるので、ぜひ、休暇を取ってください」とオファーしたのです。それが全ての始まりです。(ちなみに、シスターは小児看護士の有資格者ではあります。)

 そして、現在もヘレン&ダグラス・ハウスは経営理念の一つとして、親たちへ「リスパイト」(中休み)を提供することを強調しています。もちろん、親たちが安心してホリデーを取るには、漫然の医療体制はもとより、子どもを満足させる充実した環境やプログラムが準備されているということがあります。
 利用者である母親の一人が「病気の子も、その兄弟もここへ来るのがまるでおじちゃん、おばあちゃんの家に遊びに行くみたいに楽しみにしている」と紹介されたビデオで語っていました。

 どんなに我が子がかわいくても看病する親にも限界があります。「親なんだから我慢しなさい」ではなく、人間的な思いやりからスタートした子どものホスピス、果たして日本ではどうでしょうか?(日本にはまだ子どものホスピスはありませんが)
 また、ヘレン§ダグラス・ハウスの財源の90%近くが全英からの寄付で成立しています。日本にはチャリティのカルチャアがない、と言ってしまえばおしまいですが、何とか隣人愛的支え合いの精神が日本にも育って、私たちの手で子どものホスピスが実現できたらいと思わずにはいられません。

 

 

 
by yoshikos11 | 2009-05-22 15:16
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