映画、「アニエスの浜辺」

 フランスの女流映画監督、アニエス・ヴァルダの自叙伝的映画「アニエスの浜辺」を見て来ました。フランス映画の日本への紹介は、近年、めっきり本数が減っているようですが、今年はフランソワーズ・サガンの自叙伝映画に続いて、二本目の話題作公開です。また、今、ココ・シャネルの映画も公開中です。
 
 女性の監督が少ない中で、アニエス・ヴァルダはあまりにも有名で、私も名前は知っていました、しかし、かくいう私は、彼女の作品を見たのはこれが初めて。いわばヴァルダ映画の初心者です。彼女が80才の生涯を回想し、記念して作ったのがこの作品です。

 自叙伝に「浜辺」というタイトルを付加しているところに、まず、魅力を感じ興味をそそられました。(les plagesは「浜辺」よりも「海辺」と訳した方が素敵では?)そして映画では、アニエスが幼少期を過ごしたベルギーの海辺、戦争中疎開した南仏の海辺、夫ジャック.ドウミと過ごした南仏の島(ノワール・チエ)他にもゆかりのある世界各地の数々の海辺が、美しい映像で紹介されていました。私もその一人ですが、「海好き」の方にはこの映画、世界各地の海辺を散歩しているような気分にさせてくれるので、それだけでも楽しいと思います。

 私が、特に興味を持ったのは、アニエスが、彼女の夫であり、有名な映画監督でもあるジャック.ドウミとの死別(1990年)を、どのように映画で物語るのかという点でした。二人の結婚生活は32年間に及びますが、映画界では「おしどり夫婦」として知られていました。(ちなみに、ジャック.ドウミの「シュルブールの雨傘」は日本でも大ヒットしました)

 アニエスの「グリーフ・ストーリー」は、実は、彼女が夫の死後一年を記念して公開した作品「ジャック.ドウミの少年期」という作品に表現されているのです。ジャックが病魔に襲われ、終末期を迎えていた数ヶ月に、アニエスはこの作品を撮影しました。「アニエスの浜辺」では、その時の撮影風景が紹介され、今は亡きジャックが、彼女が働く傍らでじっと撮影の模様を見守るシーンが出て来ます。感動的なシーンでした。

 ジャックに対する生涯の思いや、やがて迫り来る死別の悲しみなど、アニエスは「ジャック.ドウミの少年期」に込めたことでしょう。ジャックは撮影が終わった時点で亡くなるわけですが、アニエスがその後のことをインタビューで話しているのが、大変印象的です。
「彼が亡くなった後も、私は映画を仕上げなければならなかった。それが過酷な一方で、まさしく喪に服すひとつの方法でもありました」と。
 アニエスは、仕上げの過程でジャックの古い作品をコピーしたり、彼について映画の中で色々語ったりしたとのこと。その過程でアニエスは「可能な限りジャックと一緒にいる必要があり、また、そうしていた」とも言います。アニエスは映画制作という行為をとおしてジャックを弔ったということなのです。

 映像によって、最愛の夫との死別を表現する、女流映画監督ならではのなんと素晴らしいグリーフ表現でしょうか!残念ながら「「ジャック.ドウミの少年期」という映画は見ていませんし、インターネットで検索しても、そのDVDはどうやら発売されていません。ぜひ、見たいのですが。。。レンタルでならあるのでしょうか?どなたかご存知でしたら教えて欲しいです。

 映画自叙伝を自分で制作しちゃうというアニエス・ヴァルダのたくましさには脱帽です!!ドキュメンターリーが得意のようですが、ロマンチストというより、人生を確実に映像に収録していく現実主義者、仕事人間といったら良いのでしょうか?

私のサイトもよろしく:http://www.gcctokyo.com

 

 
 



 
by yoshikos11 | 2009-10-18 14:34 | Comments(0)
<< マザー・テレサに奉仕した日本人 オバマ大統領とノーベル平和賞 >>