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米国「自死遺族の分かち合いのビデオ」

 紅葉の美しいシーズンもこの連休で今年は見納めかもしれませんね。一方、イベントの秋、東京は実にイベント(講演会、学会など)が多くて、私もそうですが、皆さんもどのイベントに参加しようかしまいかと迷う昨今ではないかと思います。そんな中、昨日は、家族療法家の石井千賀子氏が主催された「自死、自殺のあと遺された家族がたどるグリーフ・プロセスを理解するためのワークショップ」に参加しました。

 とっても勉強になりました。本ワークショップのメイン・プログラムは、「全米自殺予防財団」の制作による「遺族の分かち合いのビデオ」を鑑賞/学習することでした。このビデオ、たいへん見応えがあり、グリーフケアの指導者であるジャック・ジョーダン氏の司会で、5名の自死遺族がそれぞれ衝撃的な喪失体験を語ります。

 亡くした相手は、パートナー、父、夫、息子、兄、と間柄も故人の年齢も皆違います。一人一人が語るストーリーは、それぞれユニークで衝撃的ですが、実話(ナラティブ)というのはいつの場合にも心を揺さぶられものだと痛感しました。一方、そのユニークさの中には皆に共通した悩み、問題が幾つかあるのも事実であり、司会者はそれを意識して巧みに会をリードしていきます。

 GCCの講座基礎篇では自死・自殺による喪失は、「公認されない喪失、グリーフ」という括りで学習します。「死因を公にしづらい、伏せる、他の死因を告げる」などがあり、時には家族内でも本当のことを共有しない場合もあります。公にしづらいことの背後には、自死や自殺に対する社会的偏見があるので、公表することに躊躇します。これはアメリカでも日本でも同じでしょう。

 グリーフはただでさえつらいのに、周囲に隠さなければならないとしたら、また、苦痛を理解されないとしたら、つらさや心の負担が倍増します。では、社会的偏見はどのように排除していったら良いかというと、そう簡単ではなく、恐らく、教育が必要ということになります。
 私たちはどうしても、自殺や犯罪による死に対して、また、それにはトラウマが伴うので「恐ろしい」「距離を置きたい」という本能的な反応をしがちです。(それを一概に悪いとは言えないでしょう・人間に生きたいという本能がある限り)

 そうした教育の第一歩は、「なぜ、人は自殺をするのか」「どうしたら防げるのか」「遺された人のグリーフやトラウマとは」について基礎的知識を提供し、自殺という現象について一般の理解を深めることであると思います。本ビデオは、遺族の体験談を通して、この三点の教育を試みています。
 また、遺族の何人かが、自分たちが自死に対してオープンになり、coming outすることで社会的偏見を乗り越えていけると言ったことが、印象的でした。「偏見」とは、社会と当事者、両サイドの課題でもあるわけですね。

 本ビデオを共感しつつ一生懸命に鑑賞したあと、さすがナラティブのパワーに圧倒されたこともあり、帰宅したらドット疲れを覚えました。自死遺族の苦悩はそれだけ重いものなのですね。

私のサイトもよろしく:http://www.gcctokyo.com

 

 



 
 

 
by yoshikos11 | 2009-11-22 16:05
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