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「無縁社会」:コメントを多数いただきました

 昨日NHKの報道「無縁社会」についてブログに書いたところ、多数の方からコメントをいただきました。皆様、ありがとうございました。とても参考になります!
 死生学者M先生は「アメリカよりも人の絆の壊れ方が激しく、国民全員がホームレス化しているように錯覚します」とありました。家庭崩壊により、家族もバラバラ、家にいながらホームにいる感じがしない、転勤、転職で地域との繋がりを持つ暇さえない状態を指すのでしょうか。

 「アメリカでは教会が絆作りに一役買っているのか」と言うお問い合せがありました。確かにそれはあるでしょう。教会は信徒の情報を常に把握し、皆が情報を共有し合い、病気、死別、経済的困窮など苦境にある人には誰かが手を差し伸べるようにしています。
 かつては日本もお寺さんがそうした役目を担い、檀家の人たちが気軽に立ち寄って、おしゃべりをする場だったようです。地方では今もそうなのかもしれません。幸い、我が家のお寺さんは東京のど真ん中ですが、住職が気さくな方でお彼岸を始め,年2~3回は世間話をしてきます。

 医科大学の教授で死生学者のT先生は「無縁社会」というタイトルを見ただけで視聴する気になれなかったと言われました。確かにとても気がめいる言葉です。また、いかなる「タイトル付け」であれ、一旦付けてしまうと言葉はドンドン一人歩きする心配もあります。ネガティブ面ばかり目がいってしまい勝ちということもあるでしょう。言葉は注意して使う必要がありますね。
 
 サポート・グループを主催しているSさんは、今回、NHKより取材を受け「貴会では、直葬をした方はあったか」と聞かれたそうですが、「当方には 葬儀をやらずにいきなり火葬にされたという方はいませんでした。「無縁」どころか、とても強いきずなで結ばれていた方ばかりだったので。。。」と答えたそうです。実は私にも取材の依頼がありましたが、多忙時で一旦はお断りしました。しかし、GCCで私が出会った方の中にも、直葬をした方はいまだ聞いていません。

 最後に、私は「無縁社会」の一つの要因として、「個人主義」の普及があるかと思います。社会学者・上野千鶴子著「お一人さまの老後」にあるように、彼女は、高齢者単身世帯を薦めています。息子や娘との同居は誘われても拒否し、自立的に一人で暮らす方が遥かに自由で自分らしく生きやすいと言っています。家庭の温もりよりも、多少の孤独に耐えても独り身の自由を選ぶと言う意見です。
 しかし、その為には、経済面、精神面,両面での「自律」が大前提と上野女史は強調します。特に精神面での自立について、該当する日本人が一体どのくらいいるか疑問があります。「個人主義」では、互いに個々人のユニークさを尊重し、人夫々の無限の可能性を信じ、実現していくことを奨励します。実現のために、家族や周囲の人との絆がどうでも良いと言う意味ではありません。

 日本が共同体主義から個人主義へ急速に移行しつつある反面、真の意味の個人主義が理解されておらず、精神的に自立していない人が多いという側面も見逃せないのではと思いました。特に番組で「生涯単身」「単身世帯」のネガティブ面が殊更に強調されていたことは気になりました。独り暮らしであっても精神的に充実して生きる術を身につける努力も大切ではないでしょうか?

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# by yoshikos11 | 2010-04-06 03:24

NHK特番「無縁社会:無縁死32,000人の衝撃

 先程、上記タイトルのNHK特番を見ました。これまで報道した番組を、反響が大きかったことから、再編集しまとめたとのことです。現代社会は地縁、血縁の絆が崩壊しつつあることから、誰にも看取られることなく、孤独死する人が増加していると言う社会現象をフォーカスしていました。
 孤独死の中には、身元不明者(行旅死亡者と言うそうです)や、仮に特定できても血縁者と疎遠だったことで、引き取り手もなく、置き去りにされたご遺体が急増しているそうです。
 また、身よりのない人の死(「無縁死」と言うそうです)に際して、葬儀社が社員の手によって弔うサービスや、無縁仏の遺骨を引き取って納骨するお寺のサービスなどが紹介されました。お寺の住職が「どんな人にも誰かと生きた思い出や経験の数々があるはず。人生の終盤で孤立したからと言って、その痕跡が何も残らないのは不条理です」と語っていたのが印象的でした。
 NHKの取材班は「無縁死」の追跡調査をし、氏名不詳とされていた何人かを特定することができ、その方のルーツや生きざまを調べ上げました。故人の写真をクローズアップし、どんな人だったか紹介していましたが、画面を通して、今は亡き無名の方をテレビを見ている私たちが、今、追悼しているような感じがしました。報道が良い供養とも言えるかもしれません。

「孤独死」の急増は、単身世帯の増加と関連があるわけですが、特に、大都市集中型の現代社会に特徴的な、職を求めて上京した地方出身者の問題、孤独や孤立が番組から浮き彫りにされました。仕事に追われて時間も心の余裕もないままに、郷里の家族や友人と疎遠になり、10年以上も没交渉の人たちも珍しくないようです。気がつけば血縁も地縁もいなくなり、人との絆も失ってしまう。
 また、家族はあっても家庭を犠牲にし仕事を優先させた結果、定年退職を迎える頃には家族との絆は完全に崩壊し、離婚を迫られ、一人老人ホームに入居する男性の話もありました。現役時代には、社会との接点が会社だけだった。退職したら家族とも社会とも絆がなくなった。経済大成長時代の後遺症と言うべきなのか、コメンテーターの一人は「個人だけの責任とは言いきれず、社会の問題と考えるべき」と言っていました。
 「生涯独身者」の急増も現代社会の特徴です。孤独死を予知して葬儀、墓地への埋葬、遺品処理などを生前に契約しておくビジネスもあるとのこと。自分の最後にきちんと責任を持とうと言う気持ちから契約するのでしょう。
 さて、生涯独身者の誰もが晩年,孤独で寂しく、虚しく思っているわけではないと想像しますが、報道はそんなイメージを強調している点、独身者に対するバイアスがあると思いました。生涯独身者の中には、恐らく研究やキャリア訴求のためにあえて独身を貫き、生き甲斐や充実感を持って生きている人もいるはずだからです。

 「無縁社会」という言葉の響きが、何とも寂しく寒々しい感じがしました。取材された単身世帯の男性(50代)が「人との繋がりがなくなると、自分は存在しないのと同じ」と言った言葉には、胸が傷みました。「絆の壊れてしまった社会」今後、どうしたら良いのでしょうか。NPO団体などが絆の推進運動をやっているようですが、この問題は根深く、日本人の精神性や実存のテーマと関連づけて問うてみる必要もあるかと思いました。

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# by yoshikos11 | 2010-04-04 00:21

流産・死産とグリーフ

 流産・死産とグリーフ_f0101220_2323853.jpg 3月28日、日曜日、朝からどんよりとした曇り空、真冬のような寒さでした。その日は「流産,死産、グリーフケアを考える」というタイトルの講演会が慶応大学三田キャンパスであり参加しました。主催は「ポコズママの会」という死産,流産経験者の方々の支援団体ですが、この会の世話役の方々と、会の相談役、竹ノ上先生(慶応義塾大学看護医療学部教授)は、昨年、GCCの講座へご参加下さりそれがご縁で私も皆さんの活動に興味を持つようになりました。
 会場には、70名もの参加者が一同に会し(経験者と医療者を含めて)中にはカップルで来ている方も数組あり、皆さん熱心に聴講していました。同じ苦しみを体験した方々の間には、自ずと互いに思いやる気持ちや、静かな連帯感があるように感じました。皆さんホッとする場所でもあるのでしょう。
 なぜなら、世間一般は、生誕を待たずして亡くなった命について、母親が、そして父親もどんなにつらい思いをしているかなど理解していないからです。苦しんでいることすら、誰も気に留めてくれないとしたらどうでしょうか。その意味でも、竹ノ上先生がカップル対象に支援を考えると言われたことは、たいへん有益なことと思いました。せめても、夫婦が互いに思いやり、労り合い、支え合えたら、苦しみの中に、一抹の救いを感じられる気がします。
 講演者の一人は、初めてのお子さんを臨月で死産されたIさんでした。会場は水を打ったようにシーンと静まり返り、皆,Iさんの話に聞き入っていました。涙を拭っている人、うつむいてじっとこらえている人、会場全体がIさんの思いに寄り添っていたと思います。この世で、これほどまでに理不尽で不条理な喪失があるでしょうか。
 その後で、Iさんの主治医で産科医の竹内正人先生が話されましたが、先生はあたかも数年前のIさんの出産、その時、その瞬間、その場を追体験されているかのようでした。そして「私たち医療者もつらいのです」と実感を込めて一言。本当にそうだろうと想像しました。竹内先生の言葉が強く心に焼きついたまま、私は会場を後にしました。
 ギリシャ悲劇では、苦しむ人は聖なる存在、皆が畏敬と尊敬を持って崇めると言います。そんなことを思い出しました。

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# by yoshikos11 | 2010-03-31 01:31

精神科医の視点から:グリーフ理解(つづき)

 張先生のご指摘から、ぜひ、受講性には真剣に考えてもらいたいことが他に一点あります。それは自らの命を断つ行為を、「自殺」と呼ばずに「自死」と呼ぶ風潮に関してです。これは遺族の要望で「自殺」と言う言葉のイメージが強烈で衝撃が強過ぎることから、それに対してよりマイルドで衝撃も緩和される言葉「自死」がふさわしいと言う理由でそうなったと言われています。いわば同じ行為を言い表すのに後者は湾曲化しているわけですが、今では「自死遺族」という言葉が定着しつつあります。
 さて、張先生によると「自死」と呼ばれる行為は、正確には「病理性のない」「意志的な」死の選択であり、むしろ、確固たる哲学的信念に基づいて理性的に決行した場合にのみ言えることで(参照、須原一秀「自死という生き方」)この定義に当てはまらないケースまで全て「自死」と呼ぶのはおかしいと言う事になります。
 一つ前のブログに書いたように、自らの命を立つ決断をした人の大半が、少なくともその時点では(原因や状況は様々でも)精神の異常を来していると言う事実があるなら、病的で、正常な意思決定のできない状況での死の選択が圧倒的に多いことになります。(すなわち、正確な意味での自死はかなり限定されるわけです)
 この問題、たかが言葉ではないかと思う人もいるかもしれませんが、少なくとも死生学を勉強し、グリーフやグリーフ介入に関して学問的に探求する者は、見識を持って言葉を使用すべきと思います。
 さらに、張先生は貴重なポイントを指摘されました。自殺という現象を湾曲化することでの弊害は、現に精神科の介入が必要であるシリアスな状況にまで、目をつぶる、軽視する、曖昧にすると言うことです。言い換えるなら、自殺の原因を正視しない傾向は、今後、自殺予防に役立てられるはずの情報が得られず、救えるはずの人も救えないと言う悪循環になります。
 また、遺族のグリーフ・ケアの視点からも、遺された者が亡き人を救えなかったことで不必要に自分を責めることも、「病気だったのだ」と思えれば軽減すると、先生は言われました。勿論、病気に気付かなかったことや、薄々気付いていたのに専門家に連れて行かなかったことで後悔することはあるかもしれませんが、死に追い込まれた原因が皆目分からないよりは、遥かに気持ちは楽ではないかと想像します。
 最後に私の感想ですが、支援者として遺族に誠心誠意寄り添いたいと思うなら、事実の湾曲化をしていては到底、その目的は達成できないだろうと言うことでした。グリーフ・カウンセラーは文化の流れに逆らって進むことが求められていると、張先生の鋭い指摘に改めて思いました。

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# by yoshikos11 | 2010-03-29 00:45

精神科医の視点から:グリーフの理解

 大切な人を亡くして、あまりのつらさに先ずは精神科医を訪ねる人は多いようです。その場合に医師が死別に伴うグリーフについて理解していると、色々な意味で安心です。患者が眠れない、食べられない、うつ状態で日常生活もままならないなどと訴えたとしても、そうした症状がグリーフの特徴であると把握した上で適切な対処してくれるからです。
 さて、そのような精神科医は世界的にも極めて少数派です。そんな一人である張賢徳(よしのり)先生をお招きし、昨日、GCCの「資格認定コース」の受講性たちは3時間に亘る講義を拝聴しました。特に、張先生は自殺・自死遺族のグリーフについて実地調査をされ、著書「人はなぜ自殺をするか」を出版されています。日本では遺族の協力が極めて得にくいことから調査に当たっては色々ご苦労がおありだったと伺いました。とするなら、本書は貴重な文献と言えます。

 私が最近気になっていること、自殺・自死遺族のグリーフを限りなく「貧困」問題と結びつけて、自殺の原因イコール貧困と言うような短絡的な図式化をする世の傾向です。それを張先生は明確に是正して下さいました。(貧困の問題を決して軽視するものではないとしつつ)自殺の要因は複雑で多岐に亘っているが、人が自らの命を絶とうと決意する時点では、大半の人が精神を病んでいると言うことです。そうした事実を一般はもとより支援者でも知らない人が多いのが現状です。
 従って、自殺予防対策上、自殺既遂、未遂にまつわる心理を一般が理解し、水際で救済する精神科医療の充実を図ることが急務だと言うことになります。その問題と取り組まない限り、日本の自殺予防対策は功を奏さないであろうと言うお話でした。現状では、精神科医療への国家予算は大幅に不足していて改善の兆しも見られないのだそうです。

 他にも示唆に富んだ学びが多々ありましたが、常々私がGCCの講座で主張していることを、昨日は精神科医がお話くださったことで、より説得性があったのではと思われ、先生には感謝です。

つづきは又別途書くつもりです。
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# by yoshikos11 | 2010-03-28 11:41